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発汗のメカニズム

エクリン腺の汗には、3種類の異なる出方があります。一つは私たちが日常経験する、暑い時や運動をした時など、体温調節のために体全体からかく汗です。これを温熱性発汗といいます。もう一つは、人前に出て緊張したり、何かに驚いた時に出る冷や汗で、これを精神性発汗といいます。これは主に手の平や足の裏、脇の下などの局部に生じます。三つ目は、辛い物を食べた時に額や鼻や唇のところにかく汗です。これを味覚発汗と呼びます。

温熱性発汗を指令している中枢は、脳の中の視床下部というところにあり、ここで体温や発汗量をコントロールしています。気温が上昇し皮膚温度が上がると、皮膚にある温度受容器がその変化を察知し、知覚神経を通じて温度情報として視床下部の体温調節中枢に伝達します。すると視床下部にある温ニューロンが興奮し、それが今度は電気信号となって脳から脊髄を下り、胸髄や頸髄の下部から出ている交感神経を通じて、末梢にまで達すると、そこからアセチルコリンという化学物質が遊離され、それが汗腺の細胞にあるレセプターと結合して、発汗活動を促進し、体温を下げることになります。このように私たちの体には体外の温度上昇に自動的に反応して、体温を調節するメカニズムが備わっているのです。

エクリン腺に分布している自律神経で特徴的なことは、副交感神経がなく交感神経だけが分布しているということです。しかも、交感神経から遊離される伝達物質は、通常ノルアドレナリンですが、エクリン腺の場合には例外的にアセチルコリンという物質です。

一方のアポクリン腺は元々ノルアドレナリンに受容性があります。しかし皮膚の血管はノルアドレナリンに反応して収縮してしまう傾向があるので、アポクリン腺の中で血漿から大量の汗を生産して体温調節を行うには問題があります。そのために人間では、原始アポクリン腺から徐々にエクリン腺が進化するとともに、発汗神経も皮膚の血管を収縮させないアセチルコリンを伝達物質とするようになったと考えられています。

このことは人間ではその進化の過程で、体温の上昇に非常に弱い脳細胞を異常に発達させた結果、求愛行動に不可欠であったアポクリン腺からの臭いによる性的アピールを犠牲にしてまで、エクリン腺という体温調節器官を発達させる必要があったといえます。